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当社では2026年5月のAIに関する事業戦略の発表以降、社内業務プロセスへのAI活用の検討が本格化しています。特にソフトウェア開発においては、AIによる効率化や属人化の排除について一定の効果が見込まれることが明らかになっており、複数のプロジェクトで実際に成果が現れるなど、急速に活用が拡大しています。
一方、一部の米国企業で顕在化していたAI利用コストの問題が、当社でも現実味を帯びてきました。大規模モデルの高性能化やAIエージェントの普及により、トークン消費量は急増しており、単純な利用規模の拡大がそのままコスト増加につながるケースも少なくありません。
また、当社のような通信事業者においては、保護すべき「通信の秘密」に関わるデータや顧客情報などの機密情報をAIで扱ううえでの課題もあります。単に「ソブリンAI」や「ソブリンクラウド」を導入するという話ではなく、自社の重要なデータや知的資産をどのようなルールのもとで活用するのかという本質的な課題に直面しているのです。AI活用が競争力そのものになりつつある今、データ主権を維持しながら安全に活用できる基盤技術の重要性はますます高まっています。
こうしたAIを取り巻く環境変化や課題を踏まえ、当社では顧客課題を解決するサービス開発と新たな価値提供の準備を今まさに進めています。
さて、今号の紹介に移ります。
第1章では、恒例のブロードバンド・トラフィックレポートをお届けします。全体としてトラフィックは引き続き安定した成長を続けていますが、水面下では新たな変化の兆候も見え始めています。特に注目したのは、AIエージェントの普及に伴うボットトラフィックの増加と、レジデンシャルプロキシによるトラフィック構造の変化です。不正利用を可能にするレジデンシャルプロキシについては、まだ明らかになっていない部分も多く、現時点で日本への影響は限定的ですが、今後、日本のブロードバンドサービスも攻撃対象となる可能性が示唆されています。
第2章では、サーバ証明書の有効期限短縮という業界全体の大きな変化を背景とした、「IIJセキュアMXサービス」における自動化への取り組みを紹介します。2029年にはサーバ証明書の有効期限が47日まで短縮される予定であり、従来の運用手法では対応が困難になります。本章では、ACMEやLet's Encryptを活用した自動更新の仕組み、DANE対応による不正利用抑制の効果、そして送信ドメイン認証やメール経路暗号化の最新動向について解説します。
第3章では、国内プロバイダとして初めて実現した「IIJmioセーフティメールサービス」で提供している、Webメール「Mailviewer」におけるBIMI(Brand Indicators for Message Identification)表示対応について解説します。フィッシングメールやなりすましメールへの対策が重要性を増すなか、利用者が直感的に送信者の正当性を判断するための仕組みとして、BIMIへの注目が高まっています。本章では、BIMIの仕組みや、ブランドアイコン表示に利用される二種類の電子証明書であるVMC(Verified Mark Certificate)及びCMC(Common Mark Certificate)の活用方法について、IIJmioセーフティメールサービスへの実装事例を通じて紹介します。
当社は「技術で社会を支える」という使命のもと、ネットワーク、セキュリティ、データ利活用といった基盤技術の高度化に取り組んできました。今後もこうした基盤技術とAIを適切に融合しながら、持続的なサービス進化と新たな価値創出に取り組んでまいります。

執筆者プロフィール
染谷 直 (そめや なおし)
IIJ常務執行役員 ネットワークサービス事業本部 クラウド本部長。
1998年、IIJ入社。直後にIIJテクノロジー(2010年にIIJに吸収合併)へ出向。IIJテクノロジーではSI事業の立ち上げに携わり、多くのインターネットシステムの構築やコンサルティングに従事。その後、16年よりIIJのサービス事業部門に異動し、クラウド事業の中期事業戦略を担当。19年、クラウド事業責任者に就任。昨年度より「IIR」編集長に就き、IIJにおけるリアルな技術情報を横断的かつ積極的に読者の皆様へお届けしたいと考えている。
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