ページの先頭です
IIJ.news Vol.193 April 2026

シンガポール
PTC SYSTEM(S)PTE LTD Sales Department, General Manager
西山 幸秀
早いもので、シンガポールで迎える春も今年で5年目となります。眼前に広がる無数のタンカーが浮かぶシンガポール湾の風景を見ると、いまだにこれが現実なのかとふと感じることがあります。
筆者は2021年4月の企業買収によりIIJグループの一員となったPTC SYSTEM(S)(以下、PTC)に勤務しています。PTCは1991年創業のシステムインテグレータです。製造業に特化したビジネスからスタートし、現在では政府系、金融、教育、医療といった幅広い分野で事業を展開しています。顧客はグローバルおよび優良ローカル企業が中心で、中華系シンガポール人の経営陣のもと、社員やパートナーも多国籍で、国際色豊かな職場環境となっています。
シンガポールの人口は約600万人、国土面積は東京23区ほどです。法制度やルールが明確で治安は非常に良く、日本での生活と比べても遜色ありません。日常生活ではキャッシュレス決済が普及しているので現金を使用する場面はほとんどなく、チャンギ国際空港は、成田空港や関西空港を上回る利用者数を誇りながら、混雑を生じさせない運営がなされています。また、日本のマイナンバーに相当するSingpassという共通デジタルIDおよび認証基盤が整備されており、多くの政府・準政府サービスをオンラインで利用できます。
こうした高い効率性はITの積極活用によって支えられています。シンガポールは最新のIMD世界デジタル競争力ランキングでも上位に位置し、政府はAIを経済変革と社会価値創出の中核に位置づけ、政府・大学・研究機関を中心に社会実装を進めています。

シンガポール中心部のマリーナ湾エリア
PTCも近年AIビジネスに注力しており、2025年には2年連続で米NVIDIA社よりトップASEANパートナーに選定されました。その発端はコロナ禍の2020年にさかのぼり、PTCは同社のハイエンドサーバDGXを導入し、GPUおよびAI開発環境を検証したいお客さま向けに無償提供を開始したのでした。こうした取り組みが評価され、数少ないNVIDIA DGXエリートパートナーに認定され、その後も共同セミナーの開催や、デジタルツインを実現するためのアプリケーション開発プラットフォーム「NVIDIA Omniverse」をASEANで初めて稼働させるなど市場開拓に尽力しています。当初はサーバ1台を販売するのも困難でしたが、2022年後半以降、ChatGPTの登場を機に生成AIブームが起こり、GPUクラウドプロバイダ、政府系研究機関、 AIスタートアップ向けのAI基盤構築案件が本格化し、10億円を超えるプロジェクトも多数受注しています。
一方でGPUサーバの高集積化・高計算密度化により、電力消費と発熱の問題が深刻化しています。近い将来、空冷方式は限界に達すると考えられています。水冷対応のデータセンターは限られており、シンガポールではデータセンターが国内消費電力の約9%を占め、過去には電力供給不足の懸念から建設が事実上停止されたこともありました。2024年以降は、データセンター建設推進に政策転換されましたが、短期間で需要に見合った供給力を確保することは困難です。
今後は一般企業でもAI導入が本格化し、ユーザに近い場所に実行環境を整備するニーズが高まってくるでしょう。 AI稼働環境の集約と分散化ニーズに対し、IoT、エッジ、コンテナDC、建屋型DC、コンピューティングリソース、そして、それらをつなぐネットワークをワンストップで提供できるIIJグループの真価は、 AI普及の次の段階においてさらに発揮されると確信しています。
ページの終わりです